無印良品はヴィンテージになり得るか


少し前に雑誌「アエラ」で、数年前のユニクロをマイ・ヴィンテージとして着続けるひとの記事があった。

確かにユニクロの服の物理的な耐久性は高く、17年前のフリースだって普通に着ることができる。私も15年ほど前に買ったフリースをいまだに部屋着で着ていたりする。事実、最近のものより生地が厚く保温性も高いように思う。

が、そんなひとばかりだとメーカーは商売にならないので、微妙なマイナーチェンジ(素材やシルエット、カラバリ等)をしながら「今はコレです」と言いつつなんとか毎年買ってもらおうとするわけだが、「あの時のアレ」が好きだったひとにとっては、トレンドに目配せしたシルエットかどうかはどうでもよく、「前のやつのほうが機能的だし自分の体形にも合うんだよ」という話にもなる。

ユニクロが100年経ってヴィンテージになるかどうかは知らないが、マイ・ヴィンテージということでいえば、むしろ無印良品のほうがあり得るのではないか。スタンダードな定番を出しつづけているように見える無印良品の衣料も、当然ながら毎シーズン新商品が登場し、「去年買ったシャツが良かったから今年もう一枚買おう」と思っても、既に同じものは売っていなかったりする。商品開発部の面々とて、何もせずに「去年と同じでいいっすよね?」と鼻をほじっている訳にもいかず、常に何がしかの新商品をつくり続けなければならない宿命にある。

たとえば、定番中の定番であるボタンダウンシャツにしても、「形と素材を見直しました」などと言って微妙にマイナーチェンジを繰り返していたりする。着るほうとしては、「いやいや、そんな毎年変える必要もないでしょ。流行りものが欲しければアパレルブランドで買うし、無印はいつも同じものを売ってていいじゃん」と思うのだが、常に新しいものを出し続けて買ってもらわなければ社員の給料だって払えない。

しかし、そうしたメーカーの思惑をよそに、数年前の無印をマイ・ヴィンテージとして着倒している者も少ながらずいて、かくいう私もその一人だ。

ゆうに8年は着ているコットンジャケットなどもあるが、このスタンドカラーの半袖プルオーバーシャツも既に3年以上経過している。濃紺の色合いとサラッとした肌触り、ストンとしたボックス型のシルエットが好ましく、ユニクロの綿・麻のイージーパンツと組み合わせてユニフォームのように着用し、真夏の取材や打合せをこの組み合わせで乗り切った。上下同色のせいか、あまりラフな印象にならないのも良い。黒の上下だと重いが、濃紺の上下というのは日本の夏にふさわしいように思える。


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今年の春夏、ユニクロ&ルメールのシャンブレーセットアップをユニフォームのように着倒したが、思えば既に3年前から似たようなことをやっていたのかと今気がついた。

このシャツは、洗濯後、干す前にねじって結び(中尾彬のねじねじのように)、しばらく放置して皺をつけるというタイプのもので、独特の風合いが好きで同素材のレギュラーカラーシャツも買って交互に着ていた(「自然な皺は美しい」という故・安西水丸氏の提言を真に受けていることは否めない)。


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が、昨年同じものを買い足そうとしたところ、似たようなタイプながらインド綿のプルオーバーに切り替わっていた。これはこれで気に入ったので、ふたたびユニクロの綿・麻のイージーパンツと組み合わせて着ることに。


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確かに似たようなものではあるのだが、シルエットがややタイトになっている。ゆるいシルエットだった3年前のプルオーバーシャツは、もう買えないのである。同じように、このシャツに合わせて着ているユニクロの綿・麻の濃紺のイージーパンツも、既に売られていないようだ。

※インド綿のプルオーバーの長袖は今季も売られている。

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服なんて消耗品だから、新たに買う必要があるならその都度目の前にあるものの中から選んで買えばいい、という考え方も一理あるのだが、「あの時のアレ」が好きだった者からすると、新しいものの中に気に入ったものがなければ、前に買ったものをずっと着続けるという選択もある。やがてそれが、マイ・ヴィンテージになっていくのかもしれない。

「今季はこれがキテるんですよね」なんていうセリフはバイヤーやショップ店員に任せておけばいい。「それじゃ経済が疲弊し、業界も先細りですよ」と言ったところで、常にトレンドとやらに血眼になるひとたちは放っておいても山ほどいる訳で、そうした経済活動は彼ら彼女らに任せておけばいいという考え方もある。

話はややズレるが、以前テレビでマツコデラックスが、かの「フランス人は10着しか服を持たない」という言説に対して、「アタシも普段着は結構そうなのよ。同じような服何枚かで回してる感じ」と言っていた。まああの方の場合、物理的に着られる服が限られているという問題もあるとは思うが、「でもね、10着して服持ってないと、ひとからおしゃれとは言われなくなるわよ」と言っていたのが印象的だった。

確かに、常に流行りを取り入れているひと、会うたびに違う恰好をしていて、しかもそれが似合っているひとのことを、ひとはおしゃれだと言うのだろう。ユニフォームのようにいつも同じような恰好をするのは、その対極にあることかもしれない。しかし、私はそうした姿に憧れる。だから、既に買えなくなった無印のプルオーバーをこれからも着続けようと思う。





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by sakurais3 | 2016-07-11 14:11

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