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ドラマの話でもしましょうか。

1月スタートのドラマもいよいよ佳境に入ってきたタイミングなので、ひさしぶりにドラマの話でもしましょうか。

結果、継続して楽しみに見ているのは、朝ドラ『あさが来た』、大河『真田丸』、月9『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、フジ木10の『ナオミとカナコ』、TBS金10『わたしを離さないで』あたりになりました。他にも、既に終了してしまったけれどNHK木曜時代劇『ちかえもん』も毎週ゲラゲラ笑いながら見ていたし、テレ東深夜の『東京センチメンタル』も「他愛のないおやじファンタジー」として流し見しているし、桐谷美玲の富士山グチ目当てにテレ朝の『怪しい彼女』もとい『スミカスミレ』もなんとなく見ています。

やはり群を抜いているのは坂元裕二の『いつ恋』なわけですが、とにかく毎回感情のゆさぶり具合がただ事ではなく、連続テレビドラマの力というものをまざまざと見せつけられています。

ドラマの話でもしましょうか。_b0104718_14551976.jpg

倉本聰とも山田太一とも似ているとは思わないものの、両者の隣に並べても一切遜色がないばかりか、「今」というものの切り取り方と普遍的なドラマ性の両立という意味ではある意味で先達を超えてしまっていると思います。未消化なエピソード、分かりやす過ぎる悪の設定など、気になるところがないわけではないのですが、それらすべてをひっくるめて片時たりとも目が離せない。これは何も脚本だけが素晴らしいわけではなく、すこぶる魅力的な脚本を具現化する俳優や、もちろん並木道子を中心とした演出チームの手腕によるところも大です(そのことは、最近出版されたシナリオ本を読むとよく分かります)。魅力的な脚本に対してキャストとスタッフが一丸となって応えようとしている様が素晴らしいのです。あと、全編を通して衣裳が的確ですね。

あ、今日はなんとなく「ですます」文体で書いていますが、特に理由はありません、あしからず。

『あさが来た』は王道の朝ドラ感を保ちつつ、決してご都合主義に堕することなく長丁場の物語を転がしていて、ここ数年自分のなかで株が下がっていた脚本家・大森美香を見直しました(かなり前、木村佳乃が出たNHKの『ニコニコ日記』というドラマが素晴らしかった記憶があります)。そして、何より主演の波瑠の凛とした佇まいと清潔感が女傑と呼ばれた広岡浅子をモデルとした主人公に見事にハマり、朝ドラヒロイン史においても忘れ難いキャラクターになり得たのではないかと思います。

まあ、終盤に入り、あさが刺されたあたりから、あからさまに物語を畳みにかかっている気がしないでもないですが、そんななかにも見せ場をきちんと用意するあたり職人的ですらあります。AKBもこの主題歌で新しい風を吹かせたなぁと思ったものですが、次の朝ドラ主題歌が宇多田ヒカルなので一気に霞んでしまいましたね。

『真田丸』でも三谷幸喜の株が自分内で久しぶりにアップ。ツボを心得た人物の動かし方、セリフはさすがだし、何より主人公・真田幸村がその時点で知り得ないことは基本的に描かないという手法がスリリングさを生んでいます。その都度、力を持つ武将が誰なのか、誰に付けば得策なのかを見極める幸村の父・幸昌(草刈正雄)の手のひら反しのアティテュードもいっそ痛快です。NHKの人形劇『真田十勇士』へのオマージュがあるあたりも、いかにも三谷幸喜。

『ちかえもん』は、木曜時代劇の枠を大きく押し広げる野心作でした。

ドラマの話でもしましょうか。_b0104718_14555378.jpg

脚本の藤本有紀は朝ドラ『ちりとてちん』で落語を、大河『平清盛』で和歌の世界を巧みにドラマ化したひとですが、今回は人形浄瑠璃作家・近松門左衛門が、かの『曽根崎心中』を「書くまで」の話というトリッキーな設定で、しかも近松を大人計画の松尾スズキが演じるというこれまたトリッキーな配役を得て、時代考証?何それ?な勢いで「おもろうてやがて哀しき」世界を見事に創出しました。

「書けない作家・ちかえもん(近松のことです)」を演じる松尾の情けなさ全開の芝居とモノローグ(と歌唱)、「元禄のキャバクラ」たる遊郭の人間模様(女将を高岡早紀、年季の入った女郎を優香、『曽根崎心中』のモデル・お初をあかりんこと早見あかりが演じたのも最高)など、全編見どころだらけのドラマでしたが、これまた魅力的な脚本に対して演者とスタッフがノリノリで応えようとしている様子が手に取るようにこちらにも伝わり、結果見る者をも巻き込む大きなグルーヴを生み出しました。

落語「居残り佐平次」に想を得た川島雄三の『幕末太陽傳』を下敷きにしたと思しき「金がなくて遊郭に居残りする謎の渡世人」万吉を演じる青木崇高のはじけ具合も素晴らしかったですね。そして、この万吉の正体が明かされる最終回は…んなもん、号泣ですわ。

たとえば『ムー』『ムー一族』の頃の久世光彦を彷彿とさせるような「なんでもあり」な自由な演出は、今となっては民放でも不可能かもしれません。だって、初回でいきなり近松がBOROの「大阪で生まれた女」の替え歌を熱唱するんだよ!頭おかしいでしょ! いやはや最高でした。

と、ここでタイムアップ。『わたしを離さないで』や『ナオミとカナコ』『東京センチメンタル』についてまだ書いてないけど、ま、いいか。あとアニメ『昭和元禄落語心中』についても気が向いたら書きます。

じゃ、また。










by sakurais3 | 2016-03-10 14:57

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸)


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