ロックポート再見

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ロックポートを良く履いていたのは、かれこれ17、8年前だろうか。仕事で一緒になる機会の多かった年上のカメラマン氏が履いているのを見て、とても歩きやすそうな靴だと思い、「どこの靴ですか?」と尋ねてその名を知った。

その当時は、旅や食がらみの地方取材が多く、カメラマン氏と長時間歩くことも多かったため、「歩きやすさ」は靴に求める最上位のポイントだった。さらにタフであれば言うことはなく、ロックポートの靴はその条件を満たすものだった。無骨で、およそおしゃれとはほど遠いが、それもどこか好ましかった。

カメラマンと共に行く地方取材というのは、突然山道や海辺を歩くことになったり結構過酷なのだ。「靴が汚れちゃう」なんて言ってる状況じゃないので、最新のスニーカーや革靴などとても履いていけないのである。

写真のロックポートは、多分どこかの百貨店の直営コーナーで購入したはずだ(まだ、どこででも売っているものではなかったのだと思う)。シューフィッターのようなひとが足を測ってジャストサイズを見つくろってくれたと記憶している。北から南まであらゆる場所をこの靴で歩いた。モデル名は失念したが、ヌバック素材なので手入れが簡単なのも地方取材向きだった。

その後、ロックポートはビスネスマン向けの「ウォーキングシューズの履き心地の革靴」や女性向けのヒール靴なども出すようになって随分とイメージが変わっていき、いつしかABCマートなどでも置くようになり、どこででも手に入る普通の靴になった。

それ自体は良いことだと思うものの、同時に自分の感心は薄くなっていった。ABCマートが見た目を丸パクリしたホーキンスなどと一緒に並べているのもよろしくないと思った。

いつしかこの靴を履くことはなくなり、箱に入れたままになっていた。てっきり処分したと思っていたのだが、残っていた。どこも損傷がないので誰かに譲ろうとでも思って保管しておいたのだろう。

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数年ぶりに履いてみたロックポートは、やはりたいへん歩きやすかった。まるでコッペパンのようなフォルムはおしゃれや洗練とは真逆。かといってワークブーツのようなワイルドさがあるわけでもない。とはいえ、やたらとステッチの入った、よくテレビ通販などで売られている高齢者向けのウォーキングシューズのようでもない。この「いなたい」感じはなかなか悪くないじゃないか、という気にさせる。

検索をしても、同じモデルはもう売られていないようだ。昔からある定番のワールドツアーというモデルは今も売られているが、前述のカメラマン氏が履いていたのはこの靴だったはずだ。そのカメラマン氏は数年前に亡くなった。海外取材も豊富なベテランだったが、若輩者に対しても説教口調でなくいろんなことを教えてくれる大好きなおじさんだった。企画や文章を褒めてくれたことも駆け出しの身としては大きな励みになった。そんなことを、ロックポートを履きながら思い出していた。

ワールドツアーはL.Lビーンの通販サイトでも売られているようだ。Amazonには「この靴しか履けない」「同じ靴を何足も履き続けている」というコメントがあることから、長年の愛用者がいることがわかる。今なら、この靴を履いてもしっくりくるかもしれない。そんな気がしている。

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ま、ちっともおしゃれじゃないのだが。



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by sakurais3 | 2016-02-28 11:21

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