LAST SANKO SHOE---最後のラギッドシューズ ※追記あり

注文しておよそ3週間。ようやく三交製靴からラギッドシューズの茶のプレーンタイプが届いた。

同封されていた「お客様へ 営業終了のご案内」の紙を手にして、ようやくその実感が沸いた。


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松田さんの手書きのあいさつは「長い間、ありがとうございました」のことばで締めくくられている。いやいや自分なんてほんのここ数カ月の新規の客ですからと恐縮してしまったが、「そうか、泣いても笑ってもこれが最後のラギッドシューズになるのだなあ」と思い、あらためて90余年の歴史に対して背筋が伸びるような心持ちになった。

日本の靴の歴史は明治期の軍靴に端を発すると以前何かで読んだことがある。フランス製の軍靴を掻き集めて兵隊に履かせたところ、当時の日本人の足には全く合わず、多くが靴擦れに悩まされ、そこから日本人の足に合う型の靴づくりがはじまったのだという。90年前ということは三交製靴のはじまりも、やはり軍靴づくりからだったのだろうか。


まだ何も手入れをしていない状態は例によってややテカテカしているが、クリームを塗ると表情が変わることは既に黒のプレーンで体験済なので特に驚かない。三交製靴のサイトや楽天の写真で見た印象と現物とでは、かなり異なる。ごく普通の国産革だが、想像以上に雰囲気がある。



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※追記 現行のラギッドシューズ6種のなかで、茶のプレーンを選択するひとは少ないのではないか。ビジネスユースであれば黒のプレーンか型押しだろうし、カジュアルにはペッカリーか、のせモカが人気だろう。茶のプレーンは、このなかでは優先順位が低いのだと思う。検索をしても、茶のプレーンはあまり見つからない。だからこそ、試してみたかった。牛革のプレーンについては、黒でその素朴な良さを知っていたということもある。


この茶のプレーンを注文した後日、三交製靴の営業終了の告知があり、営業が終了してしまう前に黒のプレーンを補修・補強しておこうか、と思った。いや、2月に購入したばかりなのでソールの交換はまったく必要ないのだが、一ヶ所気になるところがあったのだ。あるとき手入れをしていて、右の靴の羽根を縫い付けてある部分にほんのわずかな切り傷のようなものが入っていることに気がついた。

最初から入っていた訳ではないのだと思う。右足のほうが左足に比べて幅が広いことや歩き方の癖(右足に力が入る)、聞き込み専門の刑事かってくらい長時間歩く習慣など、さまざまな要因が考えられるし、電車の中で誰かに傘の先端で引っかけられた可能性もあろう。ひょっとすると酔っぱらって自分でやっちまったのかもしれない。

革は2枚重ねて縫われているため、表側にわずかな傷が入っても裏まで貫いてしまうこともないだろうし、歩行にはなんら問題はないのだが、この先履き続けていくうえで傷が広がっていかないか、やや心配ではある(何年も履く気でいるし、ちょうど足が屈曲する部分なので)。

何ごとも早期発見・早期治療が大切ということで、今のうちに裏側から革を当てるなり補修・補強をしておいてもらったほうがいいのではないかと思い、三交の松田さんに該当部分の写真をメールに添付したところ、現物を送ってくださいとのことで直ちに靴をお送りしたのはいいが、すでに頼んである茶のプレーンが出来上がるのはもうしばらく先なので、手もと(足もと、か)にラギッドシューズが無くなってしまった。

2週間ほどノー・ラギッドな日々を送り、今日ようやく真新しい茶のプレーンと術後の黒のプレーンが届いた。黒には「おかえり」を、茶には「これからよろしく」。

黒のプレーンは、羽根部分の裏側に革をあてて補強されていた。さすがにこれでビクともしないだろう。そして、驚いたことに表面に黒のクリームが塗ってあった。作業をする際、すべらないようにとクリーナーでクリームを拭き取ってからお送りしたのだが、こうしたちょっとした気づかいがなんだかうれしい。今までムショクのクリームを使っていたのだが、黒のクリームもなかなかいいな、と思った。それに、ムショクということばの響きもよろしくない。


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という訳で、茶のプレーンにはムショクではなく茶色のクリームを使ってみようと思った。色を確認するためには現物があったほうがいいだろうと思い、茶のプレーンをカバンに入れてショップへ。いくつか見たところ、M.モゥブレイのミディアムブラウンが良さそうだったので購入。


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磨くための布もカバンに入れてきたので、ベンチでクリームをうっすらと塗り、試し履きをした。やはりクリームを塗ると、しっとりと落ち着いた雰囲気になる。ブルーのデニムにも良く似合う。とても気に入った。

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なんとなくタンタンが履いている靴のようでもある。

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などと思っている時、あることに気がついた。ソールが地面に当たる感触が、黒のプレーンとは少し違うのだ。黒のほうは、かなりがっしりとした感覚で、アスファルトのうえを歩く時などはややゴツゴツとした印象があったのに対し、茶のほうは当たりがソフトなのだ。使っている革の違いでそう感じるのかと思い、試しに黒に履き換えてみると、やはり明らかに違う。

そもそもこの黒のプレーンは、三交製靴で試し履きをさせてもらい、ジャストだったのでそのまま購入したものだ。丸善の名が入っていないのでマナスルシューズでないことは確かだが、いつ作られたものなのかはよく分からない。現行のものとも異なるモデルなのだろうか。

うーむ、ラギッドシューズについてはまだまだ知らないことが多すぎる。いずれにしても、ソールは少しだけ変化・進化しているような気がする(たまたまなのだろうか。もちろん黒のほうもとても履きやすいのだが)。ならば、黒のプレーンをもう一足注文しておけばよかったか、と今さら後悔しても時すでに遅し、だ。

履き具合の異なる二足をこれから交互に履いていくことになる。これさえあれば、他に靴はいらない。などとは言わない。フランス人じゃないから10着の洋服で済ませようとも考えないが、革靴に関してはこの二足でしばらくは十分だろう。そう考えると、何か自分がとても身軽になったような気がして、悪くない。


あとは紐を茶の革、あるいは夏に向けて白に変えるという選択もあるな、などと目論んでいるところだ。


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by sakurais3 | 2015-04-05 01:19

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