革とスニーカーの頃

この前、立ち飲み屋でひとり飲みをしていたら、隣に立つ見知らぬおじさんに声をかけられた。

「そのサッカニー、いいね」

いかにも、その日僕はサッカニーのシャドウを履いていた。ポスト・ニューバランスとして昨年秋に購入したのだが、面と向かってひとに「いいね」と言われたのはこれが初めてだった。レトロランニングシューズが人気とはいえ、そのなかでサッカニーの立ち位置はいささか微妙なところがある。全体的に野暮ったいイメージがあり、ましてやグレーともなると鈍くささが際立つせいか、あまりチョイスされることがないのではないか。個人的にはその「いなたい」雰囲気が気に入って履いているのだが、そういう靴を面と向かって褒められれば悪い気はしない。


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そして、そのおじさんがニューバランス1500を履いていることも、隣に立って2秒くらいの間にこちらもチェック済みであった。

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立ち飲み屋という場所は、構造的に客の足元に目がいく。いや、目が向かないひとは一切向かないと思うが、靴が好きな人間はまず顔よりも服装よりも相手の靴を見てしまう。そして、なんとなく人と成りを慮っている。そういう観察を続けていると、靴にはそのひとの性格や生活の態度のようなものが如実に表れるということが分かってくる。何も高級靴を履いているから金持ちという単純な話ではないが、たとえば紐の結び方ひとつにもそのひとの性格が出ると思う。

「いや、いつ話しかけようかと思ってたんだよ。ちょうど私もサッカニーが気になっていたところだったから」とおじさんは言う。そこから、しばし靴談義が始まったのだが、別れ際に「こういう話ができるひとがこの店にいるとは思わなかったよ。今日は楽しかった」と言って握手を求められた。貰った名刺を見ると、僕も時々お世話になるスポーツ用品と衣類を扱う某ショップの偉いひとだった。釈迦に説法とはこのことなり…。


という訳で、このブログで何度も書いているように、浅草の三交製靴で購入したラギッドシューズを愛用しつつ、革を休ませるためにスニーカーと交互に履く日々が続いている。スニーカーは、前述のサッカニー・シャドウと、これも昨年秋に購入したナイキのインターナショナリストとのローテーションだ。

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ふと気づくと、この秋冬はブーツを履いていない。今年は真冬でもスニーカーという気分なのだが、ここにラギッドシューズが加わってしまったので、履く機会がめっきり少なくなってしまったのだ。ということで、今日は思い出したようにレッドウイングのアイリッシュセッターを履いている。6年ほど前に購入し、一度、日本橋三越のリペア工房でソールをビブラムに交換してもらったきりだが、基本的には秋冬にしか履かないのであまり擦り減らない。

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久しぶりにアイリッシュセッターの履き心地を味わっていると、これはこれでもちろん良いとは思うものの、ラギッドシューズのあの履き具合が懐かしくすら思えてくる。やはり、今の気分はブーツではないのかもしれない。という訳で、ラギッドシューズをもう一足買い足そうと考えている。茶のレザートートを仕事で使うことが多いこともあって、茶もひとつ欲しいとは思うものの、写真で見る限り、さほど雰囲気のある革ではないような気がするのだが、どうなのだろう。三交製靴で茶の靴も見ているはずなのだが、その時点では黒一択という感じだったので残念ながら記憶に残っていない。ちなみにネットを検索していてたまたま見つけたこの丸善時代の茶のプレーントゥは味が出まくっていて驚く。現行のもの↓とは革も異なるのだろうか。


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おそらく、革の柔らかさと履き心地からするとペッカリー革の茶↓というのが最良なのかもしれないが、デザイン的にはやや敬遠してしまうのも事実だ。毎朝、公園を散歩するのが日課のおじいさん(散歩の途中でお気に入りの喫茶店でモカを飲む)がこれを履いていたらとても素敵だと思うのだが、自分にはまだ分不相応な気がする。


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ということは、牛革プレーンタイプの茶という選択になるが、写真で見るのと現物とでは印象がかなり異なるというのは既に体験済であるからして、ここは素直に(?)プレーンの黒と茶で揃えるべきかもしれない。実際、黒のプレーンタイプも、まっさらな状態からクリームを塗り、履き、クリーナーで拭き取り、またクリームを塗る、を繰り返していくうちにかなり革のニュアンスが変わってくるのを実感しているところだ。丸善時代のものと現行のものとでは使用している革が異なる可能性もあるし、現行のものであっても、その時々で調達する革が違うこともあり得るのではないか。

少なくとも、いま履いている黒のプレーントゥの革はとても好きだ。上質な革なのかどうなのかは正直分からないが、履き始めから柔らかく足に馴染み、履き続けているとニュアンスが出る。普段からとにかく歩くので、靴を酷使してしまうことになるのだが、履き皺ですらニュアンスになっているように思える。

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細みのスウェットパンツに合せるのが気に入っている。


すでにサイズもはっきりしているのだから、そんなに迷ってないでとっとと買えよ、という話ではあるのだが、あれこれ逡巡している時間すらもちょっと愉しい。これもまた「靴好きあるある」ではないだろうか。





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by sakurais3 | 2015-03-10 14:20

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