『スターログ』世代感涙のスペースオペラ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』


各所で大評判の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をようやく観た。マーベルスタジオの映画はサム・ライミの『スパイダーマン』以外さほど積極的に観ていないのだが、これは観ないと話にならないんだろうなと思い、金券ショップで前売券をゲットして立川シネマシティヘ。


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早めに到着したので、入口の前の椅子(屋外)に座り、八王子セレオで買ったメルヘンのサンドイッチをパクつく。タマゴサンド→三元豚カツサンド→スペシャルフルーツサンドの順で食べると前菜からメイン~デザートのコースのようになるお気に入りのラインナップ。特にフルーツサンドは絶品だ。


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なんて話はどうでもいい。『ガーディアンズ』を観る気になったのは、『スターウォーズ』1作目(エピソード4)を思わせるスペースオペラで、監督が『スーパー!』のジェームズ・ガンで、70年代のロック、ソウルのミックステープが重要なモチーフになっていて、という事前情報からだったのだが、どんなストーリーなのか、どんな曲が流れるのかはほぼ知らずに観た。



シンプルな感想を言えば、「最初から最後まで、とにかくグッときた!」。全編に流れる音楽の曲名は知らないほうが楽しめると思うのでここでは詳細を書かないが、ひとつだけ許してもらうならば、映画の冒頭、主人公ピーターが亡き母の形見のミックステープで聴いているのは10ccの『アイム・ノット・イン・ラブ』だ。10ccの曲が流れることだけは事前に知っていたのだが、正直もうちょっとマイナーな曲かと思いきや、ド直球に最も有名な曲が。しかし、その歌詞の内容とシーンがリンクしているという意味で、やはりこの曲がふさわしいのだ、ということが分かる(間奏に入る『Be Quiet, Be Boys Don't Cry』のフレーズ)。



そして、個人的なことを書けば、この曲が入った10ccのアルバム『オリジナルサウンドトラック』にはとても思い入れがある。10ccがどんなグループなのかも知らない中学生の時、「架空の映画のサントラ」というコンセプトに惹かれて初めて買った洋楽のロック/ポップのアルバムがこれだった。CDショップの試聴機なんつー便利なものがなかった時代、レコード屋では、店員に頼むとヘッドフォン(もしくは店内のスピーカーで)試聴させてくれた。小遣いの限られた中学生にとって、シングルならいざ知らず、LPレコードは高価な買い物。ハズレを引くことは死をも意味する(大袈裟)ので、もちろん店主に頼んで試聴させてもらった。このアルバムの1曲目は『パリの一夜』という8分もある3部構成のオペラ風の楽曲で、正直「あれ、なんだこれ。全然ロックでもポップでもないや」と嫌な汗をかいたのだが、2曲目の『アイム・ノット・イン・ラブ』のイントロが流れた瞬間、うわー、なんていい曲なんだ、と思い、「これ買います!」と言って意気揚々と買って帰り、文字通り「存在しない映画のサントラ」として繰り返し聴きながら、脳内にさまざまな映像を思い描いていたのである。


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そんな思い出のアルバムの曲がしょっぱなに流れる(しかもカセットのウォークマンから)だけで、もはやこちらのハートわしづかみな訳です。ウォークマンを抱えた幼いピーターは僕だ!君は僕だ!とすら思える。そして、有名な曲とそうでもない曲を絶妙に混ぜたミックステープの選曲がまたすばらしいのだ。


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時は経ち、大人になったピーターが、ある秘宝を盗みに降り立つ惑星の色調が、まんまSF雑誌『スターログ』の世界そのものなのにまたびっくり。そして、宇宙船のデザインが『スターログ』でも良く採り上げられていた画家のクリス・フォス風でやたらとかっこいいなーと思っていたら、後からネットで調べるとほんとうにクリス・フォスがデザインで参加していたのだった。クリス・フォスといえば、昆虫や動物のようなフォルムとカラーリングの有機的な宇宙船を描くことで知られたひとで、ホドロフスキーの未完の映画『DUNE』に参加していたことでも有名だ。


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10cc、スターログ、クリス・フォス、スターウォーズ第1作。ガキの頃の自分を形成したさまざまなパーツが、2014年の最新テクノロジーによって再構築されて目の前に突きつけられたような感覚に頭がくらくらした。スペースオペラのマナーに則りつつも、単なる懐古趣味ではなく、登場人物たちの会話や動作の間合いは確実に2014年のものだといえる。あえてチープさやレトロを売りにしている訳では全くない。分かりやすく言えば、懐かしい曲や忘れられていた曲と今の曲を絶妙につなげてリミックスするDJのような仕事ぶりなのだ。



アウトローな寄せ集めチームが、互いに反目し合いながらもやがてひとつの連帯感でつながっていく様は王道の青春映画のようでもある。そして、冒頭、死にゆく母親が差し出す手を握り返すことが出来なかったピーター少年の姿を目にした時、この「握れなかった手」がおそらく後半になって重要な意味を持つのだろうなと思って観ていると、果たせるかな、というか想像した以上に最高の状態でそれが達成されるのだ。「最愛のひとの手を握る=つながる」ことをなし得なかった少年が、大人になり、仲間と出会い、戦う中で、つながることができる瞬間の高揚感。「接続する=つながる」は、この映画の重要なモチーフでもある(敵の母船をシールドする時も無数の小型の戦闘機がつながるのだ)。そして、単なるボケキャラだと思っていた木のヒューマノイド、グルートの体を張った大活躍に涙。



主人公と母親の関係性は、スピルバーグ・オマージュ全開だったJ.J.エイブラムスの『スーパー8』と少し似ているのだが、こちらのほうが断然うまくいっていると思う。



SF少年の夢」とは故・石上三登志責任編集の『映画宝庫』のタイトルだが、まさにそのフレーズがぴったりの映画だろう。繰り返し観るひとがいるのも頷ける。



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by sakurais3 | 2014-10-09 01:21

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