太陽を盗んだシガー・ロスなベイビーズ----『残響のテロル』


最近のアニメにはまるで明るくない。『まどマギ』『けいおん!』『氷菓』あたりは面白く見ていたものの、『たまこまーけっと』は自分にとっては難解すぎてようわからん世界だったし、『キルラキル』『ピンポン』も作画・色彩設計はすばらしいと思ったものの今ひとつノレずというていたらく。最近、内容・画の両面で唸ったのは『惡の華』くらいだろうか。あと、楽しく見ていたのは『じょしらく!』か。


アニメと自分の蜜月は完全に終わったなあと思っていたタイミングではじまったのが、ナベシンこと渡辺信一郎の『残響のテロル』だった。


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しょっぱなから、あからさまな『太陽を盗んだ男』『コインロッカーベイビーズ』ヘのオマージュにやや面食らったものの、全体的には面白く見ている。


どのくらいあからさまかというと、主人公2人組の1人の名がナインなのだ。もちろんこれは『太陽~』の9番に由来する(当時、核保有国が8つあり、自分は9番目の男だ、という設定から)。


1話の冒頭、青森県の核燃料再処理施設でプロルトニウムを強奪するシーンで床にスプレーで書かれたVON」とは、シガー・ロスのデビューアルバムのタイトルで、アイスランド語で「希望」を意味する。なぜここでシガー・ロスが出てくるのかといえば、菅野よう子による劇伴はシガー・ロスの出身地アイスランドで録音されていて、かの地のアーティストも参加している。初歩的な洋楽の知識があるひとならば、「VON」と書かれていれば、「お、シガー・ロス」と思うだろうし、そもそも『残響』からしてシガー・ロスのアルバムの邦題な訳だが、どうもきょうびのアニメファンと洋楽ファンはクロスしないらしい。


作り手が影響を受けたり好きなアイテムをまぶしてドヤ顔するのもやや鼻白むのだが、やりたい気持ちは分からなくもない。なんとなく、かつて作家の吉田日出男が小説のアタマにくるりの歌詞を引用したりしていたのを思い出したりもする。「恥ずかしげもなく…」と思わなくもないが、まあ、かわいいもんじゃないか、と思うことにしよう。


少なくとも、上記のアイテムにピンときたひとは見る価値はあると思う。今後、テロの動機が語られていくのだろう。2人の少年が子どもの頃にいた施設がその核になるようだが、カズオ・イシグロの小説『私を離さないで』に登場するような施設ではないのかと想像している。


とはいえ、正直動機などどうでもいいような気もする。「この平和な日本でテロなんてリアリティがない」などと呑気なことを言っているひとは何もわかっちゃいないわけで、少なくとも東京に住んでいて「全部壊れてしまえばいい」と思わないほうがどうかしているだろうし、それは厨二病などとも関係がない普遍的な抑圧に対する暴発だろう。


「社会にはじき出された…」と歌い出すオープニング曲はいささかナイーブに過ぎるとは思うものの。






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by sakurais3 | 2014-08-02 15:47

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