「純と愛」から「あまちゃん」へ

賛否両論でいえば否が多かった「純と愛」も先週で最終話を迎えた。

「おれたちの戦いはまだ始まったばかりだ…」とは、週刊連載マンガが打ち切りになる時の常套句だが、なんとなくそんなフレーズを思い起こしたりもする幕切れだった。

結局、純は「まほうのくに」をつくれたのか、愛は眠りから覚めたのか、明確に示さないまま物語は終わる。

それまで、毎回番組の最後に実在のホテルではたらく人々を写真で紹介していたが、最終話に「ホテルサザンアイランド 社長 待田純さん」の写真が登場する、というオチがすごい。マンガのキャラクターのような人物たちが入れ替わり立ち替わりする荒唐無稽な物語を、最後の最後にたった一枚の写真を無言で映すことで現実と直結させてしまう力技。おもわず「あーっ」と意味不明な声を上げてしまった。

このドラマは、従来の朝ドラの視聴者たち、すなわち「健気でちょっとドジで、でも素直な少女の成長を目を細めて見ているオッサンオバハンたち」という「一般大衆」に向けて、「おまえらの思うような気持ちのいい話にしてたまるか」という果たし状のようなものだった。もっと視聴者が望む方向に物語の舵を取ることも十分可能だったと思うが、あえてそれをせずに、「次はどうなるのか」「どんなにひどいことが起こるのか」という一点のみでどこまで物語を推進できるのか、という実験を半年に渡って続けてきたともいえる。

果たしてそれがうまくいったのかと言えばどうだろう、という感じだが、少なくともあれだけの数のユニークなキャラクターが右往左往する様は単純に面白かった。

愛が眠ったままというラストは、「純が社長になる」という目標がとりあえず達成されたことで愛の役目が終わったことの象徴なのだとしたら、このドラマに登場する男たちはすべて女性に奉仕するために存在しているとも言えるわけで、その辺りは結構むずむずする。

しかし、目覚めない夫と重度の認知症の母親を抱えたままホテルを開業すると、そこはもうホテルではなく、ましてや「まほうのくに」でもなく、介護施設になってしまうのだが…。

ん? ということは、これからのホテルは、ゆくゆくはそうした施設に近いものになる、という予言なのか。だとしたら、深いかもしれない。


そして、今日1日からは待望のクドカン脚本の朝ドラ「あまちゃん」がスタート。

第1話から好調な滑り出し。朝ドラのセオリーを踏襲しつつ、どうハズしていくのか。能年玲奈が主演で橋本愛も出る(小泉今日子と尾見としのりという『マンハッタンラブストーリー』コンビも!)んだから、見ないテはない。



望月ミネタロウの「ちいさこべえ」(スピリッツ連載中)1巻を読む。

b0104718_16215221.jpg


原作は山本周五郎。過去に映画化、ドラマ化もされている人情話を現代に置き換えて描いているが、「大規模な火災で焼け出された福祉施設の子どもたちを赤の他人が面倒見る」という設定はポスト3.11の物語として読むことができる。というか、当然この原作を今やる、というのはそういうことなのだろう。

主人公である若棟梁の茂次は長髪・髭でほとんど表情が見えない替わりに、リーバイスファーストやコンバース、オールデンのウイングチップなど、ディティールが徹底的に描き込んであり、細部から物語を起ち上がらせようとしているのが分かる。信金支店長の娘・福田ゆう子も無表情だが、下着のディティールがむしろ雄弁に語る。

それらが全体としてうまく機能しているのかどうかは今のところよく分からないが、画を見ているだけでため息が出るのでそれでもう十分とも言える。

古臭い義理人情の話と望月ミネタロウという取り合わせは2013年の今となっては案外しっくりくるのかもしれない。


先日、新宿のタワレコで試聴していたところ、カメラマンIさんとばったり遭う。お互い家は近所ではないし、近くで仕事があったわけでもない。複数のフロアに分かれる店内で偶然遭う確率はかなり低いと思う。あまりに唐突だったためよく分からない対応をしてしまったのだが、ビールでも誘えばよかったと後悔。

そのとき試聴していたのがpredawnの1st フルアルバム「A Golden Wheel」。



POPには「和製ノラ・ジョーンズ」とか書いてあった。もちろん悪くないのだが、今の自分に必要な音楽ではないかな。
[PR]
by sakurais3 | 2013-04-01 16:26

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸)


by sakurais3
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30