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WAR IS DRUG〜映画「ハート・ロッカー」を観て

先週金曜、2本の原稿を締め切り前にアップし、あわてて六本木へ。今年のアカデミー賞で「アバター」と作品賞を争う「ハート・ロッカー」の最終試写だったのだ。

毎月、さまざまな映画の試写状が自宅に送られてくるのだが、通常、試写というものは飛び飛びで開かれ、基本1日に1回の上映のため、たまたまその時間の前後、近場に用事があれば観ることは可能だが、なかなかタイミングが合わず、試写状を無駄にしてしまうことも多々ある。ちなみに、マスコミ向け試写の場合、受付で名刺の提示が必要となり、試写状の宛名と照合がなされるため、本人以外は使用できない。

という訳で、ひさびさの試写。すでにアメリカでは各賞を総なめにし、アカデミー賞でも最有力候補と話題の作品であり、しかも最終の試写のため、かなりの混雑になるだろうと予想し、少し早めに到着するも、ほぼ満席。かろうじて席を確保できたが、自分よりも後に来た人たちは入れなかったようだ。

「ハート・ロッカー」というタイトルだけ聞くと「バンドの話か?」と勘ぐりたくもなるのだが、さにあらず。イラクにおける米軍爆発物処理班の姿を描いたヘビーな映画だ。監督は、「アバター」のジェームズ・キャメロンとも長年仕事をしてきた女性監督キャスリン・ビグロー。ゴールデングローブ賞授賞式でキャメロンは「てっきり『ハート・ロッカー』が受賞すると思っていたのでコメントを考えていなかった」とかなんとか言って会場を沸せたらしい(キャスリンは元嫁)。

脚本は、米「ローリングストーン」「プレイボーイ」等で活躍するジャーナリストのマーク・ボール。数週間に渡りイラクの米軍兵士を取材した体験をもとに本作の脚本を書き上げたというだけあって、そのリアリズムは徹底している。派手なドンパチはほとんどなく、町中に仕掛けられた爆弾を処理するという危険極まりない作業に従事する若い兵士たちの日常をリアルに描く。「ユナイテッド93」で緊張感のある画面をつくりあげたバリー・アクロイドの撮影と相まって、冒頭から手に汗握るシーンが展開し、喉がカラカラに乾くのが分かる。

爆発物処理班という視点から戦争の恐怖と狂気を描くという点が、まずユニークだ。後半、ややテンションが下がる印象もあるが(それは観客が『戦場という日常』に馴れてしまうせいかもしれない)、とにかく、かつてない視点の戦争映画が誕生したことは間違いない。

主役3人を有名な俳優が演じていないのも効果的だ。たとえば、これをマット・デイモンあたりが演じていれば「絶対に最後まで死なないのだろうな」という見方をしてしまうが、とにかく一触即発の爆発物処理班ゆえ、誰がいつ死ぬのか予測がつかないのだ。これが、画面に異常なテンションを生むことになる。

冒頭、「WAR IS DRUG(戦争は麻薬だ)」というモノローグがあるのだが、ラストに観る者を襲うある種の虚脱感こそ、まさしくWAR IS DRUGたる所以だ。

3月6日から全国ロードショーとのこと。
by sakurais3 | 2010-02-22 12:56

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸)


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