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無駄に、ネクタイ

先日、某作家のインタビューがあったのだが、その際、数年ぶりに会ったカメラマンから、「なんかさくらいさん、しゃべり方とか表情が前よりやわらかくなりましたよね。何かいいことありました?」と言われた。

やわらかく? ふーむ。まるで自覚はないのだが、数年前はもっとトンガッていたのかしらんなどと思っていたら今日テレビで「最近顔がやさしくなったと言われる人は顔の肉がたるんでいる証拠です」などと美容関係のひとが言っているのを偶然耳にし、そ、そうゆうことかと合点がいった次第。で、その番組でやっていたリンパマッサージとやらを戯れに試みてみたりしたのも昨日でひとつ歳をとったからだったりするのだが、かの美輪明宏さんは「自分が今何歳なのかなんて忘れておしまい。そうすれば人は歳をとらないのです」などと哲学的なテーゼを掲げていて、それに習って自分も何歳になったのかをいちいち自覚しないでおこうと決めている。

が、さすがに年相応ということも意識するような年齢になったので(今ごろかよ)、今年のテーマを自分なりに掲げてみた。それは、「無駄にネクタイ」。近所の本屋や飲み屋に行くのにも、ネクタイ。これは無駄だ。ネクタイというものは、「絞めなくてはならないシチュエーション」に置かれると途端に窮屈に感じるものだが、「ねばならない」から解放され、単なる遊びというか洒落っ気でもって絞めると結構それはそれで楽しい。という意味では、学校の制服に似ている。

実は最初に就職した会社が広告関係で、クライアントの企業に日参するような環境だったこともあり、その時代はほぼ通年スーツ+ネクタイもしくはジャケット+ネクタイという出で立ちで仕事をしていた。その時代にしこたまスーツやジャケットを買ったのだが、どれも今着るにはデザイン的にシンドイものがある。サイズ的にはイケるのだが(パンツはムリ)、肩幅や着丈、全体のシェイプが古い。どれもそれなりのブランドのアイテムなのだが、ここで「まだ着れる」といって無理をすると前時代の化石になること必至。

これはニットなどにも言えるのだが、いくら素材が上等でも、古いものはアームホールの太さや着丈、シェイプ、袖や裾のリブ(の強さ)などが総じて古臭い。たとえば無印良品を例にすると分かりやすいが、10年前に買ったアーガイル柄のニットと今のアーガイル柄のニットとでは、シルエットがまるで違う。従って、10年前のものを「まだ着れるから」といって着てしまうと、途端に「古いひと」になる。これがデニムやTシャツをメインとするアメリカの古着であれば、基本形が今とさほど変化していないので古臭くはならないのだが。

というわけで、古いジャケットを着るのは断念したが、ネクタイは案外使えそうだ。20本以上所有するうち、中にはキツいものもあるが、おそらく半分は使える。この中で気に入っているのが、YMOの高橋幸宏デザインのネクタイ。ミッドセンチュリーを思わせるややクラシカルな柄で、幅は太すぎず細すぎず、デニムにも合う。とりあえず、この辺りから攻めてみようか。まあ、汗ばむ季節まで、ということになるのだろうが。高温多湿な日本の気候風土に、元来ネクタイはそぐわないのだ理不尽なほどに。だからこそ、無駄にネクタイ。ただし、ラーメン食べる時には要注意だ。どれだけ注意をしても、かならずネクタイに汁が飛び散る。そういうようにできているのだ、あれは。
by sakurais3 | 2010-01-27 19:39

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸)


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