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珈琲時間

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書店のマンガコーナーでジャケ買い。豊田徹也の「珈琲時間」。たいへんよくできた表紙で期待を煽られたが、ビニ本のため中身は確かめられず、イチかバチかで購入する。が、期待以上のおもしろさ。

初期大友克洋や谷口ジローの影響を受けているのは明白だが、その影響が昨日今日のものではなく、熟成されていくうちに自分のテイストになってしまったという感じ。各話のタイトルが石ノ森章太郎だったり(ロボット刑事)、キヨシローだったり(CHOPPED TOMATO PUREE)、バカラックだったり(Any Day Now)するあたりから、すでに「いい香り」がする訳だが、「深夜食堂」が落語の人情噺だとすれば、こちらはもっとドライで、「ちょっといい話」にオトす直前で迂回する「照れ」にセンスが光る。豊田徹也は1967年生まれ。4年前の単行本「アンダーカレント」(ビル・エバンスのアルバムタイトルからの引用だろう)で注目された寡作の作家らしい。

マックやスタバではなく、マスターがひとりで切り盛りするような「昔ながらの喫茶店」でゆっくりページを繰るのがふさわしいと思う。といいつつ、自分は書店併設のオサレカフェでいっきに読んじゃいました(苦笑)。

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クリスマスは ひとんちでTV三昧。「ミュージックステーションスーパーライブ」と「結婚できない女王決定戦」を交互に見ながらデパ地下で半額になっていた照焼きチキンとワイン。ぜんっぜん金かかってないが、ふつうに楽しいデフレ・クリスマス。アンチ・バブル。

25日は、小田和正の「クリスマスの約束」。毎年恒例となっているTBS深夜のプログラムも、今年で8年目という。小田和正にとくに愛着がある訳ではないが(その証拠にCDは1枚も持っていない)、この番組はなぜか毎年欠かさず見ている。年々、小田が頑固で偏屈な下町の職人ライクになっていくドキュメントとして見るのも一興なのだが、最終形がどうなるのか分からない予定調和的でないつくりに、テレビがとっくに失ってしまったキラメキのようなものを感じてしまうのである。

今回は、キャリアや音楽的思想に関係なく、小田の呼びかけに賛同した21組34名のアーティストが集い、各々の代表曲を全員で歌う「22分50秒」のメドレーが実現するまでのドキュメント。個性の強いアーテイスト同士が時にぶつかり、時に肩をたたき合い、次第にメドレーができあがっていく様は、なかなかにスリリングだった。

そして、幕張メッセで行なわれた本番当日。21組のアーティストの代表曲を小田が絶妙なアレンジで繋げ、その楽曲を歌うアーティストをメインボーカルに、他のアーティストはデュオやコーラスに回る。ラスト、いきものがかりの曲が終わると、総立ちの会場からは鳴り止まない拍手。10分以上も続いたように思う。小田が「今までの人生でいちばん長い拍手」と漏すほど、延々と拍手は鳴り止まない。見ていて、鳥肌が立つ。年末の紅白歌合戦のテーマは「歌の力」だそうだが、「歌の力」というのであれば、このメドレーには到底叶わないのではないか。J-POPアーティストにはそれほど関心はないのだが、彼らが本気になると、ここまですごいことになるのかと、ちょっと感動してしまった。

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早くも今年1年を振り返る時期。今年印象に残った映画と音楽について記しておく。

映画

・「グラン・トリノ」
たいして予算を使わずとも、ここまでのドラマを構築できるという見本のような作品。日本で映画化するなら山田太一脚本・山崎努主演で。

・「ミルク」
ショーン・ペンがすばらしいのは言わずもがなだが、脇もすばらしい。ここのところ内省的な作品ばかりつくってきたガス・ヴァン・サントがひさしぶりにハジけた。

・「ディア・ドクター」
実際のところ、前作「ゆれる」よりも遥かに完成度が高い。見よ、鶴瓶師匠と八千草薫の色っぽい間合いを。

・「レスラー」
ミッキー・ロークの全盛期を知る世代としては胸に迫るものがある。ダーレン・アロノフスキーらしく後味はよくないが、力作。

・「沈まぬ太陽」
内覧試写のため、音楽・効果音ナシの状態で観たにも関わらず、ある種の力技でもって最後まで引っ張られた。画面から伝わるとてつもない熱量に圧倒される。

・「サマー・ウォーズ」
完成度では前作「時かけ」には負けるものの、ここで提示されたテーマ性には大いに共感できる。宮崎アニメでは決して描かれることのない世界観。

※タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」は年末に観る予定。「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は来年公開なので除外。

音楽

・「ハイファイ新書」相対性理論
1stの荒削りなファンシーさとでも言うべき肌触りはやや弱まってはいるものの、やはり唯一無二の音楽。

・「WARP20」V.A
テクノレーベル・ワープの20周年記念版。「チョーズン」「アンハード」「リクリエイテッド」(2枚組)のどれもすばらしかった。20年の歴史を検証しつつ、未来をも示唆。

・「PLASTIC」aira mitsuki
リピート回数はperfumeよりも多かった。おそらく音楽誌の年間ベストテンでは完全に無視されるものと思われる。□□□(クチロロ)とのコラボ曲「夏飴」は今年の夏のテーマソングだった。

・「トライアングル」perfume
新鮮味は失われつつあるものの聴き飽きのしないクオリティ。なんだかんだで実際はたぶん。

・「CENTRAL MARKET」TYONDAI BRAXTON
ワープ発のバンド、バトルズのメンバー、タイヨンダイのソロ。バトルズは、ポスト・ハードコアなどとカテゴライズされていたが、このソロはまるで方向性が異なる。たとえばジョン・ゾーンのグループにいたギタリスト、ビル・フリーゼルをポップにしたような音とでも言えばいいのか。

・「WOLFGANG AMADEUS PHOENIX」PHOENIX
CDをジャケ買いすることも最近は減っているが、これはその数少ない1枚。エレクトロを通過したロック。これは当たりだった。

・「CM3」CORNELIUS
音色(おんしょく)ひとつでこの人のリミックスと分かるスタイルを確立。

・「Everyday is symphony」□□□(クチロロ)
いとうせいこう加入で文化系ヒップホップ度がさらに増す。

・「THE FALL」NORA JONES
今いちばん好きな響きの音。エスプレッソでもカフェラテでもなく、ココアが似合う。

*シングル
「ROLLIN' ROLLIN'」七尾旅人×やけのはら
やけのはらは、2008年の「EXT Recording 1st ANNIVERSARY MASTER MIX」で知った。「ローリンローリン〜」のリフが耳から離れず。

・「はじめての経験」真野恵里菜
作詞・三浦徳子、作曲・KANによる王道歌謡ポップス。「なつなつなつ ギラギラギラ 来い来い来い キラキラキラ」のフレーズの応酬に心地よく脳が弛緩する。

・「シャツを洗えば」くるりとユーミン
GAPにネルシャツを買いに行ったら店頭で流れていて思わず耳を奪われた。これは好きだ。雑誌の版型に合わせて書店やコンビニで売るというiTunes全盛に逆行するかのような販売スタイルも意表をついている。ジャケットに記された「COMPACT disc DIGITAL AUDIO」のロゴマークも、実は最近気になっていたアイコン。これでTシャツでも作ろうかと考えていたので、先を越された感あり。CD時代終焉の象徴。
by sakurais3 | 2009-12-27 16:26 | 雑記

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸)


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