ユニクロ・アンド・ルメールとヌーヴェルヴァーグ


b0104718_21513518.jpg

現在、セール価格で販売されているユニクロ・アンド・ルメール。秋冬のウールイージーパンツをこの冬はかなり愛用していたこともあって、春夏のアイテムも発売前から気になっていた。


ウールイージーパンツは、ウエストがゴムになっていて、ツータックで腿のあたりはゆったり、膝から下がかなり細くなっているというデザインされた形をしているにも関わらず、実際に履いてみると奇をてらった感じがなく、手持ちのスタンダードなウールジャケットと合わせてもしっくりと馴染んだ。ツータックのパンツなんて履いたのは一体何年ぶりだろうか、という感じだが、このグルカパンツを思わせる形がすっかり気に入ってしまった。試写室や映画館の椅子に長時間座っている時にとても楽だった、というのもポイントが高い。



b0104718_21414422.jpg

春夏でもこのイージーパンツが綿素材になって出ていたので、同素材・同色のジャケットと一緒に買ってセットアップで着用しようと目論んでいたのである。



b0104718_22251039.jpg
b0104718_22224662.jpg



当初から目をつけていたシャンブレーのジャケット&イージーパンツがセール価格になったタイミングで上下まとめて購入したのだが、イージーパンツがその後さらに1000円安くなっていたのを見て哀しい気持ちになったものの、シャンブレーのセットアップでお花見に行きたかったので、これはこれで後悔はしていない。断じて負け惜しみでは、ない。↓靴は三交製靴のラギッドシューズ・茶のプレーントゥ。



b0104718_22094900.jpg


※セットアップの写真を載せたtweet「Life Style Image」で引用されていて、うれし恥ずかし花見帰り。


このイージーパンツ、私にはMサイズでちょうどいいのだが、裾が結構長め。ウエストがゴムなのでSでも問題はないが、シルエット的にはMのほうがしっくりくる。ネットでは裾上げが可能なような記述があるが、店舗で聞いたところ、不可という。「どうしたもんじゃろのう」と朝ドラ『とと姉ちゃん』の常子ばりに唸ったが、この素材の場合、洗濯や乾燥でかなり印象が変わり、生地もそれなりに縮むのでは、との期待もありつつ、NO裾上げで購入。案の定、洗濯・乾燥によってわずかに糸が詰まり、裾折り返し一回でちょうどいい長さに。


というように、ユニクロ・アンド・ルメールはサイズ選びが結構悩ましい。実はシャンブレージャケットはLサイズを購入した後、着用時にどうも違和感があったので後日Mに交換してもらった。ちなみにユニクロの店頭での返品・交換は非常にスムーズなので、着用後でも気に入らなければただちに交換してもらったほうがいい。


今回のユニクロ・アンド・ルメールの春夏にはセットアップで着用できるものがいくつかあるが、オーソドックスなネイビーやカーキではなくシャンブレーを選んだのは、もともと好きな素材と色だったということもあるが、今回の春夏コレクションが「ヌーヴェルヴァーグの映画のムードからインスピレーションを受けたもの」であり、「夏らしさ、バカンスらしい色と素材を選んだ」とデザイナーのクリストフ・ルメールがインタビューで語っていたことも影響している。ちなみにその動画の字幕が「フレンチニューウェーブの映画のムードから」となっているのだが、そこは「ヌーヴェルヴァーグ」で通じるでしょ。


ヌーヴェルヴァーグといえばトリュフォーやゴダールであるが、ルメールがインスパイアされたのは、おそらく1957年の『悲しみよこんにちは』ではなかろうか。フランソワーズ・サガンのあまりにも有名な小説の映画化で、ジーン・セバーグ演じるセシルの髪型から「セシルカット」なるベリーショートが流行したことでも知られ、この映画を観てゴダールはジーン・セバーグを『勝手にしやがれ』に起用したという、いわばヌーヴェルヴァーグの原点のような作品だ。


b0104718_21453392.jpg


b0104718_21460910.jpg


避暑地コート・ダジュールを舞台にしたひと夏の物語ゆえ、バカンスファッションが数多く登場するが、その中でセシルと父親がシャンブレーのシャツをおそろいで着ているのである。


b0104718_21530893.jpg


b0104718_21464421.jpg



b0104718_21455205.jpg


したがって、ユニクロ・アンド・ルメールの春夏は、避暑地の陽の光や潮風に似合うことを前提に、あるいは都市にいたとしてもどこかでそれらを感じられるような服だと想像する。上下揃いのセットアップであろうとスーツのようにかっちり着るのではなく、バカンス的にラフに着るのがおそらく正しい。という理屈からすれば、足元はトップサイダーのデッキシューズなどもアリではないだろうか。


b0104718_21492860.jpg


デザイナーたちは音楽や映画など、さまざまなカルチャーから影響を受けてデザインすることも多いはずだが、そうやってつくられた服を実際に着用するひとたちは案外そうした背景には頓着しないことが多い。つくり手の思いは思いとして、着るひとが好き勝手に着るのは仕方がないことだとは思う。ましてやそれがユニクロであれば、相当幅広い層(単に年齢だけではなく知識・教養においても)の目に触れることになる。


ルメールのルの字もヌーヴェルヴァーグのヌの字も知らないおっちゃんが「お、このうわっぱり、ちょっと羽織るんにちょうどエエやんか」と買っていくこともあるだろうし、そうなるともはや「コート・ダジュールの光と風が」云々はどうでもいい話であろう。そうしたある意味、開かれた、平等な、民主的な舞台に置かれたとき、そのモノは背景やブランド的な価値を超えて、モノ自体の良し悪しのみが浮かび上がる。競艇場のおっちゃんがユニクロ・アンド・ルメールのシャツジャケットを着ている可能性だってある。それはそれで、痛快なことのように思える。


b0104718_22232220.jpg

しかし、ある時期ヌーヴェルヴァーグに心酔したことのある者としては、そのことを頭の片隅ででも意識しながら着たいものだとは思う。そのように着こなせているかどうかは分からないが、せめて意識だけでも。


ある日の組み合わせ。襟にはベルギーで買ったビールのピンズ。皺加工が施してあるクレリックシャツ。スーツに合わせるようなピシッとしたシャツは合わないと思う。もう少し暖かくなったらボーダーのTシャツでもいい。


b0104718_21495409.jpg


[PR]
by sakurais3 | 2016-04-14 21:59

ライター・さくらい伸のバッド・チューニングな日々  Twitter saku03_(さくらい伸) お仕事のお問い合わせ等はメールにて sakurais3@excite.co.jp


by sakurais3
プロフィールを見る
画像一覧